第10回:「下書き」の先へ。AIをスーパーバイザー(SV)にする思考法と、安心・安全な活用術

いよいよ今回から、連載は【第2フェーズ】に突入します! 第1回から第9回までは、「事務作業の劇的な時短」をテーマにAIを活用してきました。そこで生み出した「時間と心のゆとり」を、今度は私たちが本来向き合うべき「支援の質」を高めるために使っていく。これが第2フェーズの最大のテーマです。

ここからAIは「答えを出してくれる便利なツール」から、私たちの思考を深めてくれる「壁打ち相手(スーパーバイザー)」へと進化します。

しかし、AIを相談相手にする前に、福祉専門職として絶対に知っておくべき「ルール」と、私が実際の失敗から学んだ「安心・安全な活用術」をお伝えします!


【鉄則】専門職としての倫理。個人情報は「ぼかす」

まず大前提として、AIとの対話で具体的な支援の悩みを相談する際、「個人情報をそのまま入力しない」という倫理ルールを徹底しましょう。

「実名」「生年月日」「具体的な住所」などを入力するのはNGです。 固有名詞は使わず、「通所されている方」「ご家族」といった役割に置き換えたり、詳細は省いて「寒冷地の地方都市」と抽象化したりします。個人が特定されないよう「少しぼかして」入力するのが、プロとしての安心・安全な使い方です。


AIも「知ったかぶり」をする?ハルシネーションに注意!

もう一つ、AIを使う上で忘れてはいけない大切な特性があります。それは、AIも時には「間違える!」ということです。

AIは膨大なデータから「もっともらしい言葉の繋がり」を予測して文章を作っています。そのため、時折「さも本当のことのように、もっともらしいウソ(間違い)」を回答(出力)してしまうことがあります。これを専門用語で「ハルシネーション」と呼びます。

ハルシネーションはAIが作り上げた本当のような間違い!?ですが、私が経験した別なケースとしては、AIへ質問をした文章の質が良くない(曖昧すぎた)場合に、意図しない誤った回答や解説をしてくることがあります。AIは日進月歩ですが、不完全な指示や文脈までを完全に読みとる(汲み取る)ことは出来る場合とそうでない場合もあるということです。

あくまで、AIをレスポンスの良い「壁打ち相手」として扱い、問答の中で、回答に違和感や疑問を感じる時は、こちらがAIに対してSV(スーパービジョン)を行い、訂正を求めたり(軌道修正)、事実関係に基づいてAIの回答を正す、専門的な知識や判断が不可欠となります。AI活用は専門職そのものの知識を問われることになるため、当面は守備範囲(キャリアの中)での適切な使用が望まれます。


失敗から学んだ!「1テーマ=1チャット」の法則

AIを使い始めると、つい一つのチャット(対話画面)で、色々なことを連続して相談したくなりますよね。しかし、これも大きな落とし穴です!

【私の失敗談:ごちゃまぜチャットの悲劇】 AIによる文章生成をした後、同じ画面のまま「別な要件の文章作成を…」と全く違う話題を入力したことがあります。するとAIの中で情報が混ざってしまい、突然さっきの話題が浮上してくるというカオスな状態に……。

さらに、一度こちらが誤った情報を入力してAIがそれを学習してしまうと、「いや、さっきのは間違いだから忘れて!」と指示しても、なかなか修正されず時間を無駄にすることがあります。

AIへの相談は「1つのテーマ(ケース)につき、1つの新しいチャットを作る」のが鉄則です。話題が変わったら、惜しまずに「新しいチャット」を立ち上げましょう。


チャット管理のコツ:名前をつけて、整理整頓する

テーマごとにチャットを作っていくと、今度は履歴がどんどん増えて管理が面倒になってきます。そこで役立つのが以下の2つのルールです。

  1. チャットに名前をつける: 画面の端にあるチャットの履歴に、「スーパービジョン AI」のように、パッと見て内容が分かる名前(タイトル)をつけておきましょう。これだけで後から振り返るのが劇的にラクになります。

  2. 計画的に作り、不要になったら消す: 解決した悩みや、もう使わなくなったチャットの履歴は、定期的に「削除」して整理整頓しましょう。頭の中もスッキリします。


「何でも気軽に相談できるAI」を一つ持っておくと超便利!

「1テーマ1チャット」が基本とは言え、ちょっとした調べ物や、日々のちょっとした相談をパッと投げかけられる「何でも気軽に相談できるAI」を一つ用意しておくと、実はすごく重宝します。

この時は、動きの速い「高速モード」などを選んでおくとサクサク使えます。 そして、この「何でも気軽に相談できるAI」の中で全く違う話題に移りたい時は、「話題を変えます」「これまでの内容は一旦リセットしてください」と一言だけ挟んでみてください。これだけで、AIもスッと頭を切り替えて新しい話題に付き合ってくれますよ。

難しく考える必要はありません。専門職としての倫理観、そして安心・安全のルールを守りながら、まずは気軽な「壁打ち」から始めてみましょう!

次回は、この対話の技術をさらに現場に落とし込みます。「第11回:事例検討の新しいカタチ。AIと多角的な視点を整理する」をお届けします。どうぞお楽しみに!Next➤

Hidefumi Kikuchi/CPP

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